Casa Futuro Lab. メキシコ

ガストロノミーラボ  メキシコ長期インターンシップ 4月レポート 

インターンシップ マンスリーレポート2017/04/03~2017/04/31

2017/05/09

松岡 由香利

千葉大学国際教養学部

背景情報

会社名KBFOAM(CasaFuturoLab.)

都市Tijuana, Mexico

分野:食ラボ

 

*活動内容

・キッチンでの活動

 KB Foamにおける私の活動は主に「食」そのものや「食」に関する環境を改善することです。

職場環境はトレーラーをキッチン仕様に変化させたもので、料理は工場の従業員に向けて提供しています。

ただ料理を拵えられればそれで良い訳ではなく、

―①ヘルシーな料理への意識付け 

 ②食を通したコミュニケーションづくり 

 ③日本食の周知 

の三点を意識して活動しています。以下、この三つの観点から私が一か月間に行ってきたことを紹介します。

contenador rojo
kitchen
-1#
 

 まず、①ヘルシーな料理への意識づけは、肥満体国と呼ばれるメキシコでは重要な課題です。自分の体のためを思い、自分の食べるものを選ぶことは非常に難しいことだと感じています。この点に対して何かできることを模索するために、私はこの一か月、メキシコ人スタッフの食生活の観察を行いました。

下の写真はあるメキシコ人スタッフの昼食の写真です。

DSC_0040

この一枚の写真からもいくつかのメキシコ人の食生活が読み取れます。

例えば、Fulijoresという豆はメキシコ人にとって欠かせない主食となっています。個人差はありますが、Flijoresを昼食として取らないメキシコ人はあまりいません。ほかにも、メキシコ人は辛いものを好む傾向があることが、プレートの上にかけられているChileから読み取れます。野菜にも、果物にも少し辛さをプラスさせるのがメキシコ流のようです。一か月という期間の中で食生活におおきな違いがあることは分かりました。

しかし、当初の課題である健康思考への結び付けはまだまだ私にとって研究段階です。この点に関しては今後、ヘルシーな日本食をメキシコ風にアレンジするなど、味覚の観点から糸口を見つけていきたいと思っています。

 次に、②食を通したコミュニケーションづくりです。ここでは文化は異なるものの「食事」という動物にとって普遍的な行動の中で生まれるコミュニケーションの質の向上や、食を通したコミュニケーションを生み出す場づくりを想定しています。

実際には1か月の中ではハード面において大きな改善を加えることはできませんでした。しかし、コミュニケーションを生み出す仕組みの一つとしては、今も試行錯誤の段階ではあるものの、文化の共有や理解の幅を広げることを目的とした日本食を継続的に食べてもらうイベントを考察し、毎朝食べたければ日本食を食べることが出来るという環境をつくることができました。実際に作成したポスターは下記のものです。これらの取り組みは、5月以降の期間においても継続していき、更なるコミュニケーションに発展する足掛かりになればと考えています。

毎週月曜日募集-01
ご飯と味噌汁-01
 

 最後に、③日本食の周知についての活動です。インターンシップ生として、私の立場だからできることを考えたとき、それは相手を理解するだけではなく自国について発信することだと思いました。

たまたま日本に生まれ、たまたま日本食を食べて育った私にとって、日本食は「日本食」として捉えられるものではなく普通の「ご飯」でした。それほどまでに日本食が自分に浸透していたのですが、一歩国の外に出て、日本の食文化が独特であることに気が付きました。

今まで当たり前のように目にしてきた食材がなかなか手に入らなかったり、現地の食事にはおいしくもたまにしつこい感覚を覚えたりしたのです。これまで食べていた普通の「ご飯」は普通ではないのかもしれないという思いから③日本食の周知も私だからできることであると思いました。

 その具体的な活動は②においても取り上げたように毎朝白ご飯と味噌汁、時には卵焼きを作り、日本人が普通だと思って食べているご飯を食べられる環境をつくることや毎週月曜日から水曜日まで来るClinary Art Schoolの学生のハイメさんとメキシコ料理と日本料理を交互で共に作ることです。

DSC_0108

 写真の彼がその学生で、日本食にも興味を持ってくれています。私はここに来るまでメキシコ人は陽気でおしゃべりな人が多いと思っていたのですが、そのイメージとは少し違い、物静かで真面目な青年です。料理に対する知識やアイデアも自分には想像できないものまで提案してくれています。

 この様に共同作業の中でイメージしていた人物像にはない、その人本来の姿を学ぶこともできますが、料理という視点から得た、ここでの一番の学びは、メキシコは「たし算」の国であり日本は「ひき算」の国だと気づいたことです。日本がひき算の国だということはよく耳にしますが、メキシコがたし算だとはどういうことなのかといえば、この活動中にも「たし算」文化の体験談があります。例えば、メキシコ料理には欠かせないサルサをつくった日にも驚きがありました。サルサはたくさんのChile、トマト、ハーブや調味料を使い絶妙な加減で料理に欠かせないアクセントをつくります。その数の多さにも驚きですが、用途として野菜やチラキレ、更には既に味付けされたスープにもかけられるのです。日本では味噌汁の上にサルサをかけるなんて考えられないですが、それもメキシコでは普通なのです。

 ちなみに、私が初めて作った料理は肉じゃがでした。それがメキシコ人の口に合っていたのかは疑問が残るところです。しかし、また時間をおいて再度作ることで、メキシコ人の反応を見、Clinaryの学生から積極的に意見をもらうことでより質の向上につながりそうな感じがしています。肉じゃが

 
 

・今後に向けて

 おそらく、私が一か月で見てきたメキシコ人の食生活というのはほんの一部分なのではないかと思っています。しかし、今後はその糸口をたどってメキシコ人にとって何が必要なのか、また日本人にとって何が必要なのかを見つけ、行動に移していきたいと思っています。今までには味わったことのない立場ですが、自分が頑張れば頑張るほど周りが変化していくこともこの一か月で実感しました。机が人と食事をしやすい配置になっている、看板が増える、少しの声掛けがある、そんな小さい変化でも雰囲気が変わることがあります。これを継続し、一日の中では短いけれど生きていくには不可欠な食事の時間を楽しめたり落ち着けたりできる時間にしたいです。