Casa Futuro Lab. メキシコ

パンアメリカン大学建築学部            団地デザイン課題 総評                     建築家 石井大吾

Hola! 石井大吾と申します。 千葉の幸町団地に住み、建築の設計を中心に活動しております。 ご縁いただき、メキシコのパンアメリカン大学の学生たちが、日本の団地をリノベーションするという課題のゲスト講師に呼んでいただきました。 (と言ってもメキシコに行くことはなく、日本からzoomでの参加です。これはこれで各地とのいろんな関わりが生まれやすい時代ですね) 課題は、インテリアとファサード、2つあるのですが、どの学生も両方に取り組んでいます。 ファサードについては、グループ課題となっておりました。 さてさて、メキシコの学生たちは日本の団地をどのように捉えて、どんな提案を行うのだろう、興味津々です。 事前に学生たちの作品をデータで送ってもらい、その中から当日プレゼンしてもらう作品をインテリア2作品、ファサード2作品選びます。 どうしても日本との比較になってしまいますが、感じることをいくつか書きたいと思います。

学生たちの課題作品はこちら

【インテリア課題】

 団地の各住戸の占有部分はおおよそ50平米程度の広さです。 この課題では、自分の創作活動や趣味を取り込んだ一人暮らしを想定した空間を求めていました。 それぞれに取り込んだものは、映画、本、料理、絵、音楽、、、こうやって上げていくと、日本ともそんなに変わらないかもしれませんね。 しかし、どのテーマでも、キッチンとの関係というものが、多くの学生が重要な要素として扱っているようでした。 配置についても、キッチンは入口近く、人を迎え入れる想定となっているケースも多いです。 友人たちと料理を楽しんだり、あるいはその料理と映画や本などの趣味と一緒に楽しんだり。 これは想像ではありますが「街」との関係、「家族」との関係にも大きく関わっているのではないでしょうか。 日本の街中には、本当に多くの飲食店があり、一人でもいろんな時間を楽しんで過ごすことができます。 (コロナ禍において、現在は必ずしもそうとは言えませんが) 個人の住宅は寝室、コンビニが冷蔵庫、銭湯が浴室、喫茶店が書斎、定食屋は食堂、、、道路は廊下でしょうか。 特に首都圏では、ほとんどの街でこんな見立ができるようになっています。 また、週末は家族と過ごす学生もメキシコでは多いようです。 (最近は日本でもこの傾向が高まっているかもしれません) 仲間と料理したり食事したりすることを、何人かの学生が語っており、実際に私もメキシコからの留学生に招待いただき、本場のタコスをいただいたりしました。(美味しい!) 家の中で完結する重要度において差がある、、そこからぼんやりと都市や街の構成の違いも見えてくるようでありました。

Denisse Carolina Díaz García – PAINTING ARTIST WORKSHOP

画家志望の学生がアトリエとしても使えるようにワークショップスペースとキッチンが繋がっている。課題に追われた学生がそれでも食生活だけは大事にしたいというレイアウトにも思える。イエローの差し色が無機質な団地に一瞬の輝きを刺していてとても効果的です。

Isolde Guzmán Martínez- HOME CINEMA

映画監督志望の学生の部屋でしょうか。寝室とは別に試写室のような空間があります。防音にも気をつけていて隣人への配慮も見られます。黒く塗られた壁がシアターとしても機能するし、インテリアとしてもとてもクールです。

【ファサード課題】

これは結構表現に驚きました。 色使いやモチーフの扱い方、これぞラテンと言ってしまったらちょっと乱暴でしょうか。 ただ、それが雑かと言えばそうではなく、それぞれにその表現の背景について、入念なリサーチと考察が行われておりました。 自分はこれを伝えたいんだ、実行したいんだという強い気持と、それを実現するための手法の関係がとてもシンプルに感じられ、見ていてもスッキリとした気持ちよさがあります。 日本の学生達の表現を改めてイメージすると、感情が複雑骨折しているのではないかと思えてきます…。 だからこそ到達できるクオリティもあるとは思いますので、必ずしもどちらがよいという話ではありませんが、あまりにもナイーブなものが多いということも感じます。 これは、小説や映画なども含めたあらゆる表現にも通じるかもしれません。 広く捉えて表現することで、多くの矛盾や減点を受け入れることよりも、小さな部分を捉えて突き詰める、、ここに価値を置く傾向があるのでしょうか。 いやー、自分の仕事をイメージしても、なかなか厳しい指摘を受けるようです。 作品については、日本で実施されたらとても素敵な風景になり、人気も出そうなものがありました。 国を超えて団地に変化が起こり、その変化を楽しんで受け入れる、そんな環境でありたいですね。 課題の後に、学生達が日本のイメージを語ってくれました。 これほど情報が発達しても、イメージというものはそんなにも変わらないようです。 日本の学生の多くがメキシコに対してルイス・バラガンのイメージを持つように。 どこか知らない土地に対して想像力を持つ、ということは素敵ですね。 私もいずれ、メキシコの土地を訪れたいと思います。 gracias adios

Janeth Franco Castorena   Gyna Berenice Medina de la Cruz

最初にビューティーという壁面の文字を見たときに後頭部を後ろからガーンと殴られたようなインパクトがありました。そして、じわじわと、あっ!でもありかもという余韻が残りました。シンプルに美しかったり、綺麗だったり、かわいかったり、楽しかったり、そんな壁面がある団地というのがあってもいいのではないでしょうか?WATASHIたちがアルファベットをデザインとしてとらえるようにメキシコ人がカタカナをデザインとしてとらえる感覚を日本でも試してみたいというような気持になりました。

Juan Pablo Arreola Espinosa  Eugenio Dávila Olavarría

メキシコのタラベラ陶器の意匠を拡大して壁面にタイルで貼るアイディアなのかとも思いました。しかしそのモチーフになっているのは日本の菊の花だそうです。そして京町屋の格子をイメージしたルーバー。とても繊細な色使いと大胆な意匠。伸び伸びと繊細に表現する18歳のメキシコの学生。どのように育つとこのような精神性を持つことが出来るのでしょうか?そう日本には菊の花と木造の家が長い年月受け継がれてきているのです。